関東近世史研究会は、2012年10月に創立50周年を迎えました。武蔵野地方史研究会(代表:伊藤好一)と関東地方史研究会(代表:北島正元)とが母体となって発足した本会は、1962年10月に明治大学で第1回の大会を開催し、以後連綿として活動を続けてまいりました。この間、1960年代後半から70年代前半には、大学紛争の影響によって活動が停滞した時期もありましたが、大会・月例研究会・シンポジウムの開催、会誌『関東近世史研究』および各種の史料集や論文集の編集・刊行などに、精力的に取り組んできました。
江戸を中心とする関東は、江戸幕府のお膝元≠キなわち権力基盤であることから、関東近世史の研究は日本近世史の研究にとっても極めて重要な意味を持っています。これまで毎年の大会では、このような関東近世史研究の基本的な認識を背景に、関東の村落構造や地域編成、市場・商品流通、江戸地廻り経済、百姓一揆・世直し、旗本知行といったテーマを追究してきました。そして、村落研究は文芸・信仰・医療といった多面的な視角からのアプローチへと発展し、「領」や組合村といった地域編成の問題は、社会の秩序や公共性との関連性の検討へと展開、さらには下級武士社会も含みこんだ江戸の都市論にも関心を寄せ、また関東以外の地域との比較検討も試みてきました。こうして関東の歴史的・地域的特質を考え、そのことが日本近世史研究に対する発信にもなっていたといえます。こうした本会の研究活動については、2012年度の大会に合わせて岩田書院から刊行した創立50周年記念論集全3冊(本会編『関東近世史研究論集』1:村落、同2:宗教・芸能・医療、同3:幕政・藩政)に凝縮されているといえるでしょう。
本会は、関東はもちろん全国的に会員が分布し、また幅広い世代の研究者によって構成されていますが、日常的な活動は常任委員会が中心になって進められています。常任委員会のメンバーは、おもに首都圏の大学の教員や大学院生、博物館や資料館・文書館等に勤務する学芸員など、20〜30代の若手研究者が中心になっています。常任委員会は、大学の枠を超えて大会のテーマや課題意識などについて議論し、相互に切磋琢磨し合う中心的な場となっています。これは、本会が培ってきた良き伝統といってもよいでしょう。こうした活動に、とりわけ若い研究者のみなさまに是非とも参加していただきたく思います。
創立50周年を経て、今後も会誌『関東近世史研究』の確実な発行、大会・月例研究会の着実な実施はもちろんのこと、さまざまな企画にチャレンジし、さらなる50年を歩んでまいりたく存じます。本会は、これまでにも関東各地の研究団体との合同例会を開催してきましたが、近年は関東各都県の自治体史編纂の成果と課題を検証し、それに学ぼうという例会企画も進行中です。みなさまの入会を心よりお待ちいたしますとともに、大会や月例研究会などへの積極的な参加をお願いして、本会の紹介とさせていただきます。
関東近世史研究会 会長 大友一雄